紅茶日記
水とストレートティーの不思議な関係(ユウホの紅茶四方山話)

前回の更新から少し間が空いてしまいましたが、今回は水とストレートティーの不思議な関係に付いて御紹介させて頂きたく思います。

よく、紅茶の教習本などでも「お茶を淹れる時には水はとっても重要」などと書かれていますが、実際にはどれくらい重要なのでしょうか?今回はそれを写真付きで出来る限り詳しく、かつ分かりやすく説明していきたいと思います。少し長い記事になると思いますが、どうかお付き合い頂ければ、と思います

では、まず今回使う水達に登場して頂きましょう~。

今回使う水はそれぞれタイプの異なるこの5種類。分かる方はどういう水か既におわかりかと思いますが、まずはそれぞれの水のデータを紹介していきたいと思います。(左からA,B,C,D,Eとさせて頂きます)

A↓

ナトリウム 5.00mg カルシウム 0.05mg マグネシウム 0.01mg

カリウム    0.08mg 硬度 1.7mg/L pH 9.5~9.9

B↓

ナトリウム 0.70mgカルシウム 1.90mgマグネシウム 0.23mg

カリウム    0.15mg 硬度 57mg/L pH 8.2

C↓

ナトリウム 1.16mgカルシウム 1.15mgマグネシウム 0.80mg

カリウム    0.62mg 硬度 60mg/L pH 7.0

D↓

ナトリウム 0.70mgカルシウム 8.00mgマグネシウム 2.60mg

カリウム   No data 硬度 304mg/L pH 7.2

E↓

ナトリウム 0.94mgカルシウム 46.8mgマグネシウム 7.45mg

サルフェート  112.1 硬度 1468mg/L pH No data

(※サルフェートとは日本語で硫酸塩のことで、便通を良くしたり、利尿作用を促進したりする効果があるそうです。一部のミネラルウォーターや温泉の成分に含まれているとのこと。)

以上のようなそれぞれ硬度と成分の違う水を集めてみました。

まずは、お茶を淹れる!……その前に、それぞれの水を単体で飲んでみてのメモから。

A↓

非常になめらかですっきりとしている。しかし、胃にあまり感触がなく、飲んだ後口がほぼ無い。

普段浄水器を通して飲んでいる水ともまた違う、不思議な印象の水。

B↓

Aと比べると最初の一瞬のみ角を感じる。非常にスタンダードというか普段蛇口から飲んでいる浄水器を通した水にとても近い。(特に高級な浄水器を通した物に近い)

C↓

Bの物と非常に近いが、それにほんの少しだけ風味のような物が残る。Bの水が沢の水なのに対してこちらは岩を通した伏流水なので、その違いが出ている……?

D↓

少しトロっとしていて水自体に「味」を感じる。

E↓

はっきりと「味」を感じる。口に入れた瞬間トロトロっとスープを飲んでいるような口当たりがし、味は薄いこぶ茶を飲んでいるような「うまみ」成分を感じる。水と出汁を5:1ぐらいで割ったような……。

以上が水に関しての印象、です。見た目は全く同じなのに、飲んでみるとこれ程の違いがあります。では、これらの水でお茶を淹れるとどうなるのか♪

今回は一般的に水によって特性が左右されると言われるダージリンリーフティーを各水で試飲してみます。

まずはカップにお茶をそれぞれ正確に計測して入れていきます。そこにテイスティングポットに満杯になる100℃のお湯を同時に準備し、注いでから正確に時間を計測し、一気にカップへ入れるという方式です。

さて、それでは出来上がったお茶の色はそれぞれどうなっているでしょうか……

(※左からA,B.C,D,Eの順です。軟水→硬水の順に並んでいると思って頂ければ幸いです)

さて、このようになりました。

AからEに向かっていくにつれて茶色が鈍くなっているのがお分かりになるでしょうか。全て同じ時間、同じ量の茶葉を使っているにも関わらず、水によって色に違いが出てくるのです。うーん、不思議。では、次にそれぞれのお茶を飲み比べた印象です。

A↓

お茶のタンニンの成分が包み込まれているかのようにまろやかな味。全体的に角が無く、飲み始めから一貫してあっさりとしたお味。

B↓

Aのお茶と比べるとお茶の持つボディーがしっかりと感じられる。水の印象と同様に、仙台の水を浄水器に通した時の印象にとても近い。

C↓

Bと非常に似ており、入れ替わっても区別が付かない程。

D↓

お茶だけではない色々な味を感じる。水の時に少し風味を、と思った味が強く前に出てくる印象。なんというかうすーーーーいだし汁の中でお茶を淹れたような、そんなお味。

E↓

だし汁の中にお茶が入ったかのような風味がします。お味自体は違いますが、構成は梅こぶ茶、とでもいいましょうか。とにもかくにもそれぐらい普段飲んでいる紅茶には無い風味がメインになっています。水単体の時よりもだし成分を強く感じるくらいです。更に驚くことには、お茶の表面に油分のような物が浮いていること。タンニンで分解された大量の鉱物成分のようです。

ということで、基本的には硬度の低い水で淹れる程ダージリンの本来持つ風味がそのままに出やすいようです。(ただ、Aの水からあまり風味が感じられなかったのは、Aの水が多く持つナトリウム成分が関係しているのでしょうか。この辺りは追検証が必要なようです……)

また、一般的にダージリンティーの評価はお茶の本場と呼ばれるイギリスよりもドイツやフランス、特に山岳部での評価が高いと言われますが、これはイギリス家庭で一般的に使われる水が硬水であり、軟水が非常に手に入りにくい環境であることにも大きく関係しているのではないか、と考えられます。(反対にヨーロッパでもダージリンの評価の高い地域は地元の水が軟水であることが多い)

しかし、面白いことにこのAからEまでかなり異なる特性を持ってしまったダージリンティーですが、実は出し殻からは全く同じ香りがするのです。これこそ我が社がテイスティング時に出し殻を重視する理由(※お茶の特性水の観点を除いて判別できる)だったりします。とっても不思議ですが、本当に全く一緒になるので、ご家庭でも2つポットを用意するだけで簡単に実験が出来ますので、ぜひぜひ試して頂きたいと思います。