ここにティールームがあることの意義

文:ガネッシュ編集部 /写真:井上浩輝

日本が、世界全体が、正体のはっきりしない感染症の脅威にさらされて縮こまる2020年3月。
仙台市定禅寺通りのガネッシュティールームに、一組のお客さまがありました。

名を名乗るわけでもなく、ただ静かにお茶をお楽しみになって……おられたわけ、です。たぶん。おそらく。きっと。

こんな書き方をしたのは、これはお客さまがお訪ねになった数日後に偶然耳にしたお話で、私も実際そのお客さまにお会いしたわけではないからなのですが。

 

その一組のお客さまは、この3月に東京都の高校を卒業なさったそうです。
18歳の男子2人。
東京から仙台まで、卒業旅行というには大分シンプル。
新幹線1本、1時間半の距離。

なぜ仙台へ?
きけば、大学受験が一段落し、来年の受験に再挑戦することを決意したタイミングでの小旅行だったのだとか。

 

暖冬明けの3月とはいえ、仙台の風はまだ冷たく、空高くそびえる街のシンボル・けやき並木は丸はだか。
ガネッシュティールームの窓辺、37年経った古い長テーブルに腰掛けた年若いふたりは、いったいどんな会話を交わしたのでしょう。

わかっているのは、彼らがガネッシュのロシアンティーを気に入ってくれたこと。
そして来年、杜の都・学都仙台が誇る東北大学へのリベンジを決めたということ。

 

混沌とした世の中。「高校生」という肩書きを卒業し、何者でもない自分。行く先の定まらない日々に、不安で眠れない夜もあるでしょう。
そんな時に訪れてくれた、ガネッシュティールーム。
1杯の紅茶、その1時間が、彼らの心をほんの少しでも和ませ、道標となるリベンジの炎を心に灯すきっかけの一つとなれたのであれば、こんなに嬉しいことはありません。

 

不安だらけの世の中です。
混沌の渦に巻き込まれて、自分を見失ってしまったような気持ちになることもあります。

この時代に、ティールームで、いつもと変わらず、あたたかく、お客さまをお迎えすること。
お客さまおひとりおひとりの人生の、その大切なひとときに、わたくしたちのティールームを選び、わざわざ足を運んでいただくこと。

一杯の紅茶をご提供し、そして楽しんでいただくことの意義を、今回改めて教えられたような気がします。

 

これからも
新茶の紅茶が
あなたの心の拠り所のひとつであり続けられますように。