西表島 紅茶の店
ティーハウス 花ずみ

文:ガネッシュ編集部 /写真:SorAsha

ガネッシュの紅茶を楽しめる
全国のティールームをご紹介

仙台市中心部、定禅寺通りのケヤキ並木に面する株式会社ガネッシュ直営のガネッシュ・ティールーム。1984年のオープン以来全国の紅茶ファンに愛され、「この一杯」のためにたくさんのお客さまが遠くから足を運んでくださいます。

でもやっぱり遠くてなかなか……そんな方もご安心ください。ガネッシュ新茶の紅茶を楽しめる全国各地のティールームをご紹介します。

 

2019年4月、西表島(いりおもてじま)に一軒のティーハウスが誕生しました。
沖縄本島よりもさらに南、東京から2000キロ。日本で一番南、そして一番西の、新茶の紅茶ティーハウスです。

紅型染めの暖簾(のれん)を分けて迎えてくださったのはオーナーの新(あら)あや子さんです。

あや子さんは西表島生まれ。30代半ばから丸30年間、那覇の中心街で沖縄料理「居酒屋 花ずみ」をお一人で切り盛りなさっていました。大繁盛していたお店を譲り、いまなぜ西表島に戻っていらっしゃったのか。なぜ西表島で紅茶のお店を開くことになったのか。
様々な種類の野菜が彩り豊かな特製スパイスカレーをいただきながら、じっくりお話を伺いました。

ーーカレーに添えられたお野菜が色鮮やかですね!この薄黄色は……?

(新あや子さん(以下同じ))
パパイヤのシリシリです。
カレーの添え物は基本的に島でとれる野菜。あとは買えるものね。
この地区にはスーパーが一軒しかないからね。

 

ーーすぐお隣の玉盛スーパーですね。

そう、お買い物ができるのは玉盛さんと、あとはもう一件、車でしばらく行ったところにある集落の共同売店です。

 

ーーお買い物ひとつとっても、東京や那覇とはまるで別世界ですね。30年間も営まれた沖縄料理のお店を離れて、いま、生まれ育った西表島に帰って来られたのはどうしてですか?

那覇で営んでいた「花ずみ」は、格式張った琉球料理ではなく沖縄の家庭料理のお店でした。わたし一人で、毎日毎日仕入れと仕込みを朝から晩までかかってやっていましたね。

それでも全然苦痛ではなかったの。やめたいと思ったことはほとんどなかったですね。人と会って話すのが好きなんです。
でも60歳を過ぎたら夜遅いのが眠くって。

その頃から、ゆくゆくは居酒屋よりカフェがやりたいな、と思うようになりました。

そんなタイミングで、たまたまガネッシュの耕也社長とお知り合いになって、ご自宅で紅茶をいただく機会があったんですよ。
その時のすごくエレガントな優雅なお茶会に感動してしまって。
さらに、耕也社長に紅茶のお話を聞いて、紅茶のイメージが全く変わりました。

私は小さい時から喘息やアレルギーがあったから、我ながら健康オタクなの。
でも、紅茶のことは何も知らなかったことに気が付きました。
新鮮な紅茶がビタミン豊富なことも、(編集部注:新鮮な紅茶のタンニンで)脂肪を分解されたミルクティーが良質なタンパク源であることも、うわ〜知らなかった〜とびっくりしました。

紅茶って素晴らしい!この優雅さが素敵!と感動して帰ったんです。

そして、2016年に社長のスーパーバイザー講座(編集部注:現在は紅茶講座という名前に統一)を受け、それから徐々に那覇の店を姪っ子たちに譲る準備を進めました。

実家の母も90歳になって、そろそろ母中心の暮らしをしたいと考えていたタイミングでもありました。

2018年10月に西表に帰り、築40年になる母の自宅の一角で新茶の紅茶を使ったティールームを始めよう、と決めました。
耕也社長たちにも手伝っていただきながら改装をスタートしたのがその年の11月。
耕也社長にはぐるり外壁のペンキ塗りをお願いしてね。

畳敷の床は板張りに直したんですよ。石垣島から運んだ板を使って、夜な夜なひとりで張り替えました。
玄関を入ってすぐの入口の青いタンスは自分で塗ったの。

自分が来ることでお母さんの生活を大きく変えることはしたくないと思っていたので、できたら何一つ捨てたくなかったんです。
ガネッシュのみなさんにもアイディアをいただいて、お金をかけてお店を作るよりも今あるものを活かしてやる方法がないか、と考えました。

キッチンは保健所の許可のために少し手を入れたけれど、結局ほとんど母の住んでいた家そのままです。

メニューは、ガネッシュさんの新茶の紅茶オリジナルメニューと、耕也社長たちと一緒に開発した花ずみオリジナルティーを中心に、ガネッシュさんで習った紅茶のシフォンケーキや紅茶のゼリー、その他にアガラサー(沖縄の黒糖を使った蒸しパン)等も手作りしています。

このメニューブック自体も、集落の共同売店で売っていた紙のバインダーに、以前の店で使い残して余っていた壁紙を貼って手作りしたんですよ。

 

ーー茶帽子がかわいいですね!

茶帽子は、自分が気に入っていた服をほどいてリサイクルしたの。ひとつひとつ時間がかかるけど、沖縄の麻紐なんかを使ってアレンジしてね。楽しいですよ。

ーー棚にずらりと並んだ様々なカップやポットも素敵ですね。

ティーカップは一個一個違うでしょ、旅行先で集めたものです。
ポットやティーカップやその他の茶器は、出かけた先で気に入ったものを見つけてはコツコツと増やしました。

 

ーーところで、あや子さんが西表に帰ってくるきっかけの一つでもあったお母様の米さんは今も大変お元気です。お知り合いがいらっしゃると接客もなさる。「看板娘」ならぬ「看板おばあ」ですね。

米さん、少しお話を伺えますか?

はい、私は大正15年3月生まれ、94歳です(編集部注:数え年)。

 

ーーお元気そのものですね!

歩くのは少し痛みがあるけれどね、おかげさまで元気ですよ。いま島内でイチバン年が大きいですね。

西表の隣の新城(アラグスク)島の生まれです。私が生まれた頃は、島で芋・粟・果物を作って、自給自足の生活をしていました。

新城は水がない島だったので、水と米の栽培のために西表まで船で通ってね。その頃は帆船です。
新城が戦争で攻撃を受けたときには西表に避難してきました。夜中に帆船で新城に渡って芋をとって食べました。

 

ーーあや子さんとの新生活、そして紅茶の店が始まってみていかがですか。

(米さん)
ありがたいですね。あや子が食事を作ってくれます。
近所の方も来てくれるから、調子がよかったら私もみなさんに挨拶しています。

(あや子さん)
母にはキャベツ、キウイ、りんご、ノニ、それから家で採れるバナナをミキサーにかけた食べる酵素ジュースを毎日飲ませているの。1、2ヶ月したらお母さんの顔のシミが薄くなってきました。顔はふっくらしたままだけど体重が落ちてきたから動きやすいみたい。

 

ーーわあ!お庭のバナナですか!それもメニューに載せてほしい!

西表では、海や山から採ってきたものを食べるんです。自生している芋や葉っぱですね。

ちょっと庭から採ってきましょうか。。。

(あや子さん)
オオタニワタリはよく観賞用として用いられるけれど、葉先の柔らかい部分を折ってさっと湯がいて食べると美味しいの。

あら、こんな時間、米さんの百歳体操の時間だわ。ちょっとお鍋見ててくれる?米さん送ってくる!

 

ーーえっあや子さん、あの、お客様がいらっしゃいますけど……!?

。。。いや、この緩さが西表。島外からのお客様も、ここではみな西表の時間の流れに身を任せます。

 

西表島の紅茶の店 ティーハウス花ずみさんのもう一つの楽しみ方、大自然の中で楽しむテイクアウト新茶の紅茶については、次回の記事でご紹介いたしましょう。

 

<SHOP DATA>

紅茶の店  ティーハウス 花ずみ
住所:沖縄県八重山郡竹富町南風見201-75
   高速船・フェリーが着く大原港から徒歩5分
電話番号:098-085-5261
営業時間:11:30〜17:00
定休日:水曜日
  営業時間・お休みは随時変化します(例えば米さんのお迎え等)。
  ぜひお電話でお問い合わせの上お出かけください。