Tea room カメリア

文:ガネッシュ編集部 /写真:SorAsha

ガネッシュの紅茶を楽しめる
全国のティールームをご紹介

仙台市定禅寺通りに位置する株式会社ガネッシュ直営のガネッシュ・ティールーム。1984年にオープンしたこのティールームは全国の紅茶ファンに愛され、「この一杯」のために遠くから足を運んでくださるお客さまが絶えません。
でもやっぱり遠くてなかなか……そんな方にお知らせしたい。ガネッシュの新茶の紅茶を楽しめる素敵なティールームは、定禅寺通り以外にも全国各地にございます!

今日はその中から、(株)ガネッシュ代表取締役・阿部耕也がフルプロディースした(直営店以外での)第1号店、岡山県岡山市の「Tea room カメリア」を訪ね、オーナー・安倉敬恵さんのインタビューをお届けしたいと思います。

場所は岡山県立図書館の真向かい、斜め向かいには岡山県庁庁舎。知らなければ見過ごしてしまいそうな間口の狭い階段をトントントンとあがればそこが『Tea room カメリア』です。

席数12席、厨房は2畳ほどの、こじんまりとした店内。このカメリアをひとりで切り盛りするのがオーナーの安倉敬恵さんです。

 

ーーお店をオープンして何年になりますか?
(安倉さん)今年(2018年)で14年目になります。

 

ーーどんなきっかけでティールームをオープンなさることになったんでしょう。
(安倉さん)元々は車のショールームで働いていました。そのときにお客さまにお茶を出したりすることがあって。ときどきお客さまが「お茶おいしかったよ~」なんて言ってくれる。それがとっても嬉しかったんです。もともと人と関わること、おしゃべりすることが楽しいな、という思いはありました。紅茶そのものも好きでよく飲んでいましたね。
ある日、紅茶の雑誌で見たガネッシュさんの新茶の紅茶が気になって、取り寄せてみました。飲んだらおいしいの!びっくりした。
これだ、この紅茶でティールームをやりたい!と思って、紅茶に付いてきたリーフレットを見て本社に電話をかけました。そうしたら本社の方が阿部社長の携帯電話の番号を教えてくださって。社長さんに直接お電話するなんて普通はあり得ないことなので緊張しました(笑) でも勇気を出してかけてみたらね、阿部社長の声が、とっても耳心地よかったんです。それまで車の営業でいろんな人の声を聴いてきたから、阿部社長の声を聴いて、悪い人じゃないっていう直感がありました。だからその電話で阿部社長に「仙台に来られますか?」と訊かれたときに、その場で「はい」と即答しました。

 

ーーそれで実際仙台に行かれたんですね?
(安倉さん)はい。仙台に行って、仙台のガネッシュさんのティールームでお茶をいただきながら、「新茶の紅茶で紅茶屋さんがしたいです!」って阿部社長に伝えました。
阿部社長に「どんなお店をやりたいの?」と訊かれたので、「仙台のガネッシュのティールームこのままでいいです、おまかせします。」って即答しました。

 

ーー仙台のティールームはそのとき初めて訪れたんですよね?社長にも初めて会った。それなのに「おまかせ」でよかったんですか??
(安倉さん)ガネッシュのティールームが本当に心地よかったし、紅茶もケーキも最高に美味しかった。そして実際に会った阿部社長が声の印象通りだったから、大丈夫、って思ったんです(笑)。迷いはなかったですね。
そのあと、前職に区切りをつけていくつかの候補地を阿部社長に見せるまでに半年かかりました。阿部社長が実際に岡山まで来て、すべての候補地とそれから私のお気に入りのカフェ何軒かをいっしょに回ってくださいました。

ーー現在の場所に決めた理由は
(阿部)「僕がここでやってもいいな、って思ったんだよ。」

 

ーーえ~今回はプロデュース第1号店ということで思い入れが深く、またオーナーインタビューシリーズ第1回ということもあって、弊社社長・阿部も同行しております。

ーーここでやってもいい、というのは、何を基準に判断するのでしょう。
(阿部)まず考えるのは、この場所にガネッシュのティールームがあると仮定して、自分が客・ゲストとしてこのティールームに通いたいと思うか。
一方、自分がビルオーナーだと仮定して、テナントオーナーとしてこの人に入居してほしいと思うか、という視点でも考える。ティールームの継続性を考えた時に、ビルオーナーとの関係もすごく重要なんだよ。
ティールームの場所としては、その両方を満たしていることが僕にとってまず最初の基準になる。

 

ーー場所選びはティールーム経営の上でとても大事な要素ですよね。自分がお客さん・ゲストとして継続的に通いたいと思える場所か、また、ビルオーナーとの関係も含め継続的に店をやっていきたいと思う場所か、を考えるということですね。
(阿部)そう。その2点。 ここカメリアの場所についてもう少し細かい点でいうと、ここでの決め手は窓だったね。窓が低い。絶妙な高さなの。これが気に入った。ゲストとしてここでお茶を飲む自分を想像した時に、なんとも心地いい。季節によって陽の入り方が変わるから、年間通して飽きずに通いたくなる。窓がこれ以上高くても低くても僕はここを選ばなかったと思う。

 

ーー継続性、というキーワードがでてきました。
(阿部)オーナーとしてティールームを運営していくにあたって、継続性・安定性という要素はとても重要。
実はその当時、いまカメリアがあるこの地域は、シャッター通りだったんだよ。図書館もまだ建っていなくて、本当に人の影がなかった。でも僕は、ここに質のいいティールームができることで、この地域が安定するな、カメリアを軸に人が集ってくる様子が見えるな、と感じたんだよね。それは長年の経験によって培われた勘だね。ここに質のいいティールームがあることで、この地域がティールームを軸に安定的に発展していくという形が見えた。

 

ーー地域性も視野に入れて、継続的なティールーム運営が可能な場所を見極めるということですね。
(阿部)そのとおり。

ーーさて安倉さん、「おまかせ」とおっしゃっていましたが、実際はどこまで「おまかせ」したのでしょう。
(安倉さん)お手伝いの方なしで、自分ひとりでやりたい、ということは決まっていました。あとは本当に阿部社長におまかせ。
岡山で長年暮らしてきたツテがあったので候補地こそ幾つかあげさせてもらいましたが、内装から客席の配置まで、全て阿部社長にお任せしました。

 

ーー椅子やテーブルもですか?
(安倉さん)はい。質感や色などの希望をお伝えして、あとはおまかせ。私はティールームの開店・運営に関しては素人だったので、ティールームのプロがいるんだからプロにまかせた方が絶対いい、って思ったんです。

 

ーー失礼ですが予算などは……
(安倉さん)ゼロからお店を作り上げるわけですから、阿部社長にご相談する前にはそれ相当の額を覚悟していました。実際にはコンパクトな額におさまりましたね。内装やテーブル類、厨房の備品等々全てを合わせても3桁万円中ばです。半分は金融公庫から借りました。

 

ーープロデュースにかかる費用などは?
(阿部)カメリアに限らず、基本的には、スーパーバイザー講座費用及び私が現地に伺う際の交通費等をいただいています。その他はご相談内容によってケースバイケースです。

 

ーー場所を決めて工事が始まって。ご自身の準備はどうなさったのでしょう、お茶の入れ方とかケーキ作りとか……
(安倉さん)店舗の工事と同時期に、仙台で研修をさせてもらいました。まずはケーキを焼くところからでしたね。

(阿部)安倉さんが最初に作ってきたケーキはほんとにキビしかったよ!(笑)

ーーケーキ作りはそのときが初めてだったのでしょうか。 
(安倉さん)いえ、もともとケーキ作りは好きで、夜な夜な焼いたりしていたんですよ。当時働いていた職場に持って行くとみんな「上手ね~」って言ってくれるし、自分的には結構大丈夫だろうと思っていました(笑)
研修前にパウンドケーキの型が送られてきて、これでフルーツケーキを焼いてみて、って。はりきって作って送ったのに、仙台での評価はさんざんだった。材料もすごーくいいものを使って作ったのに……

(阿部)すっごく力が入っていることがわかるケーキだった。力が入りすぎてガッチガチのケーキだったんだよ。真面目な性質が現れていた。
だから研修では、いかに力を抜かせるかがポイントになったね。安倉さんを直接指導するスタッフには、「とにかくいっぱい作らせてくれ、時間を決めて素早く作れるように」と2点だけ指示した。

(安倉さん)ガネッシュさんのティールームの実際の厨房の中で、毎日本当にたくさん焼きました!焼きあがって「どうですか」ってスタッフさんにきくと「おいしいと思ったらそれでいいよー」って言われてびっくり!

(阿部)作っている動きを見れば食べなくてもわかるんだよ。それと作っている時の音とスピードだね。

 

ーー紅茶の入れ方も一からガネッシュでお勉強なさったんですか?
(安倉さん)そうです。たくさん練習させてもらいました。定番のストレートティーやアッサムティーはもちろん、たくさんの種類があるガネッシュのオリジナルティーまで、全部です。

 

ーーそしていよいよオープンですね。開店当初から順調でしたか?
(安倉さん)最初の頃はお客さまが7−8人の日もありました。でもそれは予定通り。というのも、オープンするにあたり、宣伝などは一切しなかったんです。タウン誌等の取材も、来てくださったら受けるけれど、自分から売り込んだりはしなかった。

(阿部)そのあたりはオーナーの性質に合わせてプロデュースしています。ばっちり宣伝をして最初からエンジン全開!というのが合っている人もいるし、ゆっくり慣れていくのがいい人もいる。安倉さんは後者だと思った。体が慣れていないところにたくさんお客さまが来ても対応できないだろうから、焦らずに半年かけてゆっくり慣らすのがいいと思って。

 

ーーカメリアの名前はじっくりじっくりここ岡山に浸透して、今では毎日店内に入りきれないくらいお客さまがいらっしゃる。でもお店の営業時間が短め(12時-18時,月火定休)ですね?
(安倉さん)オープン当初、定休日は週に1日。11時から20時まで営業していました。
でもそのうち楽しくなりすぎちゃって。定休日なしにして2年間くらいやりました。仕込みが多くなってお店に寝泊まりするようになって、それでも楽しくて楽しくて!
ただその頃に、身内に不幸があったりして、私も自分の身体をメンテナンスしてあげなきゃな、って思うようになったんです。
「休んでもいいから続けて」というお客さまの一言も大きかったですね。それで、少しずつ定休日を増やしたり営業時間を短くしたりして、今のスタイルに落ち着きました。

 

ーー仕込みのお話がありましたが、ケーキもこの厨房で作っていらっしゃるんですよね?厨房がものすごくコンパクト!
(安倉さん)はい(笑) ここで全てのお茶をいれ、全てのケーキを焼いています。たしかに狭いけれど、とっても機能的に配置されているからなんの不自由も感じません。定禅寺通りのティールームで修行をさせていただいた時に厨房の狭さには慣れていたので、かえって効率的に感じます。

 

ーーケーキはその後いかがですか?
(安倉さん)オープン当初は全てガネッシュのケーキレシピを使っていましたが、だんだん定期的に来てくださるお客さまが増えて、いろんなケーキをご所望いただくようになって。徐々に「本日のケーキ」として季節の果物などを使ったケーキも出すようになりました。仙台の研修でケーキ作りの「形」を教わったので、それを元に、本などでみたレシピを自分の好きな味にアレンジするかんじです。

ーーお昼にはカレーをお目当てのお客さまも多いようです。
(安倉さん)サラリーマンの方から幼稚園に入る前のお子さんまで、幅広い方に召し上がっていただいています。ガネッシュオリジナルのカレー粉をたっぷり使ったカレールーに、その時季の旬の野菜をトッピングしています。

 

ーーそんなに小さなお子さんもカレーを召し上がるんですか?
(安倉さん)そう。ガネッシュのカレー粉で作ったカレーは風味豊かなんだけど辛さは控えめだから。小さなおこちゃまも、カレーを食べてケーキを食べてお茶も飲んで、フル完食していきますよ!
うちは不思議に妊婦さんのお客さまも多くて、生まれる直前に「産む前に飲み納め食べ納めです。産んできます!」って(笑)。おなかの中でミルクティーを感じていた赤ちゃんが、生まれてからもカメリアに来てくれるんです。カメリアの歴史はお客さまの歴史でもあるな、と感じます。

 

ーーカメリアの歴史はお客さまの歴史。変化を続けながらも変わらずにこの場所があること。Tea room カメリアでは「継続性」「安定性」が具現化されているように感じられますね。
(安倉さん)ありがとうございます。このカメリアという場所を維持していくにあたって、私自身はカメリアの部品のひとつだと思っているんです。この紅茶があって、お客さまがいらっしゃって、私がいて、みんなでこの心地良い空間を維持・継続している感覚です。これからもそうでありたいと思っています。

 

女性おひとりで約14年。「楽しすぎる」が故にワークライフバランスに悩んだりもしつつ、今後もみんながやさしく集うあたたかな空間を維持していこうという気概はオープン当初と変わらない安倉さんでした。

 

<SHOP DATA>

Tea room カメリア
住所:岡山県岡山市北区丸の内2-12-14 2階
電話番号:086-232-0156
営業時間:12:00~18:00(日曜営業)
定休日:月・火曜日(祝日の場合は翌日休。臨時休業もありますので直接お店へお問い合わせください。)