サロン・ド・テ・クリハラ

文:ガネッシュ編集部 /写真:SorAsha

ガネッシュの紅茶を楽しめる
全国のティールームをご紹介

仙台市定禅寺通りに位置する株式会社ガネッシュ直営のガネッシュ・ティールーム。1984年にオープンしたこのティールームは全国の紅茶ファンに愛され、「この一杯」のために遠くから足を運んでくださるお客さまが絶えません。
でもやっぱり遠くてなかなか……そんな方にお知らせしたい。ガネッシュの新茶の紅茶を楽しめる素敵なティールームが、定禅寺通り以外にも全国各地にございます!

今日はその中から、宮城県栗原市にある『salon de thé KURIHARA』をご紹介します。
前回に引き続き弊社社長・阿部もインタビューに同行しました。

見渡すかぎり田畑が広がる仙台平野に青くはためく旗が、サロン・ド・テ・クリハラの目印です。 

扉を開けると出迎えてくれるのは一枚板のどっしりとしたテーブル、黒く輝くグランドピアノ、そしてなんともほがらかなオーナーの伏見夫妻。

伏見麻実(あさみ)さんは、かつてガネッシュ・ティールーム定禅寺通店のスタッフとして活躍していました。

 

ーー麻実さん、ガネッシュのスタッフになった経緯からお聞きしてもいいですか?

(麻実さん)
高校までここ栗原市で育ちました。もともとの夢は「美術館の入口で座ってる人」(編集注:学芸員のことと思われます……)だったんです。一日中座ってるのサイコー!って思って。「美術館の入口の人」になるためには法学部がいいときいて、推薦で入れた大学の法学部に行きました。でも入ったら勉強がいやになっちゃって(笑) 卒業するのに必死で就活もままならなかったんです。ちょうど就職氷河期ということもあって、就職先が決まらなかった。

そのときにふと、私の父と母が「第二の人生としてはやらない喫茶店でもしたいなぁ」と言っていたことを思い出しました。将来両親の助けになるかもしれないな、と思って、大学卒業後に宮城調理製菓専門学校のカフェ・レストランコースに入学しました。そこに紅茶のカリキュラムが組まれていて。それが阿部先生(編集注:弊社代表阿部)との出会いでした。

将来のイメージとしてカフェをやりたい、という漠然とした想いはあったので、授業の後に勇気を出して阿部先生にあいさつに行ったんです。勉強させてください、って。
そのとき阿部先生に宿題をもらいました。「ガネッシュのティールームに行ってお茶を飲むこと。阿部先生の著書である『紅茶に恋して』を読むこと。の2つでした。
そのとき私はなんだか人生に迷っていて、「先生」を探していた(笑) 阿部先生との出会いにピンときて、その宿題に没頭しました。『紅茶に恋して』にはレシピのページがあるんですが、そのレシピを全部試して写真を撮ってレポートを作ったんです。そして阿部先生に会いに行きました。

 

ーーレポートの成果はいかがでしたか?

(麻実さん)
すごくワクワクして行ったのはいいんですが、阿部先生に何か少しでも質問されるたびに身体がフリーズしちゃって(苦笑)
でも阿部先生はじめスタッフのみなさんに私の思いを受け入れていただき、(株)ガネッシュに就職させていただくことになりました。

(阿部)麻実さんの純粋な情熱に、「うちでお預かりしましょう」となった。でも入社当初は、指導スタッフからの報告も「今日はたくさんフリーズしていました。」「今日はあまりフリーズしていませんでした。」ばっかり(笑)

 

ーーフリーズしながらの研修は麻実さんにとってやはり辛いものだったのでしょうか。

(麻実さん)
いえ、それが、とってもたのしかったんです!フリーズしながらですけど(笑)

(阿部)麻実さんは今までの社員・スタッフ・アルバイトさんの中で、ケーキ作りやお茶の入れ方、接客の仕方などをマスターするのにかかった時間がダントツで最長!

(麻実さん)間違いなくそうだと思います。私をここまで育てていただけたんだから、私が大丈夫だったんだから、どんな人でも大丈夫!記事にするときそこ強調しておいてください!(編集注:強調させていただきました)

(阿部)入社から2年半経って、ケーキやお茶がやっと形になったなぁと思ったところで……

(麻実さん)いわゆる寿退社になってしまいまして……(笑)

 

ーーその寿退社のお相手がこちらの伏見さんですね。

(伏見さん)ガネッシュさんに取引先としてお世話になっているときに知り合いまして。はい(笑)

ーー寿退社でいったんガネッシュ・ティールームを離れたあと、サロン・ド・テ・栗原のオープンに至る経緯をお話しいただけますか?

(伏見さん)結婚後、すぐに転勤で岩手県の盛岡に異動になりました。ほどなくして子どもに恵まれたのですが、この息子が本当に寝ない子で。

(麻実さん)1日2、3時間しか寝てくれない子どもでした。ずっと泣いていて……私の体力に限界がきて、両親の助けを借りるために栗原の実家に帰ってきたんです。

(伏見さん)それから一年後に、僕も30歳を迎える前に第二の人生を考えたいと思って、その時の仕事を辞め、栗原に住所を移しました。
昔から料理をつくるのが好きで、小学生の時の夢は料理人でした。ですから、お義父さんが定年を迎え、家族がこの地に揃ったことだし、さあティールームを始めようか、となったときには、自然と僕もそのティールームの一員となる流れでした。

ただ、実をいうと、僕は当初お店のオープンには反対していたんです。妻の実家との関係などから、お店を開くとしたらその土地は決まっていました。この場所はなにせ見てのとおり田舎ですから、車でないと来れない。妻と義両親は、「紅茶専門」のティールームにすると言う。でも僕はガネッシュさんで直接働いた経験もありませんでしたから、紅茶はどうやって仕入れるのか、妻は大丈夫というが本当にガネッシュさんから紅茶を分けてもらえるのか、などなど不安だらけでした。

 

ーーその不安をどのように解消してオープンに至ったのでしょうか。

(伏見さん)ガネッシュさんのお茶を使ってティールームをオープンしたい、と阿部社長に相談した後、ガネッシュ・ティールーム店長の友帆(ゆうほ)さんが、茶葉やハーブを持って僕たちを訪ねてくださいました。お茶の入れ方はもちろん、お茶の研究の仕方なども友帆さんに指導していただいて、それで「あ、ガネッシュさんがこういう風に助けてくれるならやっていけるかも」と安心しましたね。
オープン前には、実際にガネッシュさんのティールームにお邪魔して、丸一日の営業の流れなども勉強させてもらいました。

 

ーーティールームを文字通り「建てる」ところから始まったんですよね。

(麻実さん)
はい、建物自体は、父の知り合いや私の従姉妹の力を借りて建てました。私は小さく建てたかったんです。最初から大きなお店にするのはなんだか怖くて、小さいところから始めたいと思っていました。
でもピアノの教師をしている母は、せっかくだからミニコンサートも開けるような空間にしたい、と言い出して……ケンカしいしい家族みんなで相談して、今の形になりました。

ーー内装などはどうされましたか?

(麻実さん)
内装も家族みんなで考えましたね。椅子やキッチンのステンレス台、シンクなどは仙台の中古家具屋さんで探してきたんです。趣味で集めていた小物もありますが、ほとんどは中古屋さんなどをたくさん回って探して探して安くみつけたなんちゃってアンティーク(笑)
結局は好きなものを集めているうちにこういう形になった、というかんじです。

 

ーーティールームとしてのコンセプトはありましたか?

(麻実さん)
地元の方に来ていただきたいな、ゆっくりしていただきたいな、という思いがあってティールームを始めました。野菜も地元にこだわっています。

 

ーーインタビュー中にランチセットをいただきましたが、こちらに使われている野菜も……

(伏見さん)
玉ねぎとなす、紫蘇は自宅の裏庭で栽培したものです。

 

ーー麻実さんが先ほどお電話で「あ、おばあちゃん?紫蘇の葉あるかなぁ、とってきてくれる?」と仰っていた!

(伏見さん)
そうそれです。ズッキーニとトマトは栗原産で、これも季節によっては自家菜園で採れたものを使います。

 

ーーさきほど「地元」というワードが出て来ましたが、実際にオープン後、地元の方からの反応はいかがでしたか?

(麻実さん)
地区のおばあちゃんたちが待ち合わせして歩いて来てくれたりするんです!うれしいですねぇ。お食事・ケーキ・紅茶、おばあちゃんたちには見慣れないものも多いみたいなのですが、みなさん楽しんでくださっているようです。
ガネッシュ直伝のシフォンケーキはみなさんにビックリされますね。まずはその大きな見た目にビックリ。嬉しいのは、食べた後に「これ好きだー」と言っていただいたり、さらには次にいらっしゃったときに「あのときのあれ、ある?」なんて言ってくださる。

(伏見さん)
なんども足を運んでくださる方がいるのは本当に嬉しいです。こんなところまで来てくれてうれしいなぁ、って。
実はオープン当初は、忙しいと「ああもう今日は店じまいしたいよー」なんて思ったこともありました。でも、会社員をしていた頃と違って、お客さまをお迎えすることそれ自体がダイレクトに自分の仕事、糧になっているんだ、という感覚が徐々に芽生えて。それで徐々に、どんなに忙しくても、お客さまが来てくださって嬉しいな、としみじみ感じるようになりました。

 

ーーお客さまをお迎えすること自体が「嬉しい」というわけですね。他に「嬉しさ」を感じる瞬間はありますか?

(麻実さん)
私はシフォンケーキがうまく焼けたとき。ケーキセットの盛り付けがうまくいったときも嬉しいですねぇ!盛り付けが終わって、お茶もはいって、「今日はこれを出せるんだぞぉ!」っていう自己満足の瞬間がたまらない(笑)

(伏見さん)
僕は自分のいれたお茶を美味しいって言ってもらったり、作ったケーキが売れたりしたときが嬉しいです。

ーー当初のコンセプト通り、お客さまは地元の方が多いのでしょうか。

(麻実さん)
もちろん地元の方にも来ていただいていますが、意外と遠方からのお客さまも多くおられます。
50代60代の、時間をゆっくり使える女性の方が多いですね。でも毎週来てくださる男性もいらっしゃるんです!
それから、毎月1回、このティールームを使ってベビーミュージックの会を開催しています。その会からこのティールームを知ってくださったお子さん連れの若い方も多くご来店されます。

 

ーーその他にもこのスペースを様々な催しに活用なさっていると聞きました。

(麻実さん)
隔月でミニコンサートを開催しています。英会話教室も始まります。そうそう、栗原市の婚活イベントに使っていただくことも決まりました。撮影スタジオとして使っていただいたこともありますし、絵画の個展、それから今後は様々なワークショップにも活用していただきたいなと思っています。

 

ご夫婦、ご両親、さらにはおばあちゃんもいっしょに、家族一体で地元のみなさんとの朗らかな輪を作り上げている「サロン・ド・テ・クリハラ」。
田園地帯に突然できた、地元のみなさんには耳慣れない「ティールーム」という場所が、三世代あるいは四世代の幅広い年齢層が集う場所として受け入れられていく様子が感じられました。

 

<SHOP DATA>

salon de thé KURIHARA  サロン・ド・テ・クリハラ
住所:〒989-5501 宮城県栗原市若柳字川北大袋前16-1
電話番号:0228-32-3916
営業時間:10:00〜18:00
定休日:水・木曜日(臨時休業もありますので直接お店へお問い合わせください)