阿部耕也の紅茶日記
2003年春茶情報

やっと届いた2003年春茶です。まずはダージリン茶の木箱を開封して、その香りと味わいをチェックしました。これは届いた紅茶とオークション時に送られてきたサンプルティーとを比べながらのチェックです。政府管理下の公認オークションですから中身の入れ換えなどの不正が起きる余地は無いのですが、万が一を考えチェックをします。加えて輸送中のダメージがないか?オークション前のテイスティングと味・香りが大きく変化していないか?等も調べます。創業から20年の間には「おやっ?」と思う変化に出会った事もありましたが、これぞ発酵茶の面白さと難しさです。


さて、今回のNamrlng茶園の春茶は冷めてからも味わいを増していく、まさしく一級品です。味わいの中に春茶特有の緑の香りが、温度が下がっていく毎にどんどん溶け込んでいきます。今回のNamrlng茶園の春茶の様に、熱い紅茶から出る豊潤な香りが、紅茶が冷めた時には今度は味として感じられる紅茶が最高です。茶園の生産者や加工技術者、更に私達最前線のティーテイスターもそれを理想としているのです。ですからテイスティングではカップに注がれた紅茶ではなくまず出し殻の熱い香りを嗅いで紅茶の素性を確かめ、次にその香りが室温まで冷えたカップの紅茶液にどれだけ溶け込んでいるかをチェックします。香りがどんなに良くても冷えた紅茶が美味しくなければその紅茶は選ばれません。逆に香りが悪くても冷えた紅茶液が美味しいというお茶もあります。がしかし何れも時間の経過と共に香り、味が悪くなってしまう要素ですので、私達に選ばれることはありません。『出し殻の香りがよくて、冷えた時の紅茶の味わいがその香りをぎゅっと凝縮している紅茶』という理想とする紅茶の条件を満たしている場合は、時間経過における味わい・香りの変化は殆どありません。中には摘み取りから4、5ヶ月過ぎた頃から香り・味わいを日を追う毎に増してくる紅茶も少なくありません。そんな紅茶を見極めるには長年の経験とカン、それに鋭い感性を持ち、そしてテイスティングには体調を整えて臨むことが大切です。                   

2003年Namrlng茶園の春茶はこれらの条件を全て満たしてくれている紅茶です。発売をお楽しみに。